2010/12/29

Team IQ / チーム IQ

Thomas Malone of MIT and his colleagues found that the performance of small groups/teams is not co-related with the IQ level of the team's members nor that of the cleverest member of the group/team. The factors significantly influence the performance are:
- Members' social sensitivities,
- How equally the conversation is distributed among members, and
- Ratio of female members!


MIT Malone 教授達は、小集団の業績が、成員の平均IQや、チームの中で最も高い成員のIQとは関係ないことを発見した。業績に関係した3つの要因は:
・成員の社会的感受性(EQ?)
・発言が成員間で平等である程度
・女性成員の比率


2010/09/27

ITと仕事のスキル


一般には、ITの普及と共に必要とされる仕事のスキルレベルが向上し、要求スキルレベルの低い仕事は機械化されると考えられる傾向がある。しかし、ごく単純な作業は、逆に機械化が難しい場合も少なくない。

The Economist (September 11th 2010) の記事は、洗ったタオルを畳む作業の例を冒頭に上げ、このような仕事は必要なスキルのレベルは低いものの、ロボットより人間の方が遙かに上手いと指摘している。同記事によると、IT投資の結果、スキルレベルの高い仕事(専門職等)とスキルレベルの低い仕事(単純作業)の労働は増え、中レベルの仕事(秘書、工場の監督等)の労働がコンピュータに置き換えられ、これは国を問わないという(右図は同記事より)。

この現象は、幾つかの問題点を提示している。

まず、これからの組織設計をどう考えるか? 中間的なスキルはITにより置き換えることを前提とすべきか?

次に、教育の効果をどう考えるか? もし中途半端にスキルレベルを上げることが失業につながるのならば、例えば社会的に高校卒を許すべきではないのか(つまり、中卒か、大卒のみ)?

最後に日本では社会の二分極化が問題となっているが、これは日本に限った問題ではないのか? これが(しばしば仮定されているような)社会制度の欠陥ではなく、IT投資に起因するのであれば、どのような対策や対処法が可能なのか?


2010/08/31

動物と組織

エコノミスト誌(2010年8月14日号)の記事によると、アリや鳥の群れ行動を経営問題に応用できるようになってきたという。アリの集団行動をシミュレイトして、トラヴェリングセイルズマン問題(セイルズマンが、指定された都市を1回ずつ巡回する最も効率的なルートを求める、オペレイションズリサーチの問題)に適用したり、鳥が他の鳥を見て餌を探す行動の分析結果を、画像分析や医療診断等に応用できるという。さらには、集団で機能するロボットも研究されている。脳も全体の働きを司っている部位がある訳ではないので、アリや鳥の集団を使ってより理解できるようになるかも知れない。


自律分散的組織も、アリや鳥の群れ行動から学べることがありそうである。

もう一つ、同号には、犬が居ると人間の組織行動がより協力的になり、業績が向上するという実証研究が紹介されている。オフィスでも犬を飼うべきだろうか。

http://www.economist.com/node/16789216?story_id=16789216

2010/07/07

偽物を纏うと偽物になる?

この実験によると、クロエの偽物サングラスを掛けていると言われた被験者は、本物を掛けていると言われた被験者よりもインチキをする頻度が大きくなったという。ここでのポイントは、どちらも「本物」のクロエを掛けていたという点である。

これは、組織運営上重要な問題を提起している。また、ときどき、どうしても偽物の臭いがする人に会うのも、理由がない訳ではないかも知れない。

http://www.economist.com/node/16422414?story_id=16422414

Wearing a fake makes you a fake

According to the experiment, those subjects who were told that they were wearing a pair of counterfeit Chloé glasses cheated more than those who were told they were wearing real ones (in fact, all the subjects were given authentic Chloés).

This result has profound consequences on how we manage our organisations. And there may be a good reason when we feel someone is a cheat just by looking.

http://www.economist.com/node/16422414?story_id=16422414

2010/03/01

オリンピックにおける日本の成績


ヴァンクーヴァーで日本のメダルが多かった(十分だった)かどうかが、議論され始めている。

成績の議論は、他国との比較になるのだが、どの国とどう比較するかが問題となる。冬季オリンピックはこの比較が難しい。当然ながら、雪や氷が多い北国でかつ豊かな国(たとえば、ノルウェーなど)が有利となるが、この要因をどう計量的に反映させるかが難しい。

夏のオリンピックについては、地理的な優位性が余り効かなくなるので、もう少し話が単純となる。国の人口によるメダル数の評価は既にされている(例えば、http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3984.html )が、目立った傾向は出ていないようである。これは、昔の素朴なオリンピックであれば、確かに人口が多い方がその分だけ優秀な選手が多くなる確率が大きく有利であったろうが、現代のオリンピックはトレーニングなどにお金が掛かるために、人口だけでは説明できないということであろう。むしろ、経済力(GDP)で評価する方が、現実に合っていると考えられる。

評価対象としては、まず、開催国は常に有利であるので除外する。GDPの比較的大きな先進国としての G7(米国、日本、ドイツ、フランス、英国、イタリア、カナダ)が比較の候補と考えられるが、ロシアや中国は社会体制が異なることから除外するのが適当であろう。その他、韓国が比較的日本と似ていると考えられるので、評価対象に加える。

水平軸に GDP、縦軸に獲得メダル数のグラフを書くと、当然ながら、右上図のように右上がりとなるのだが、下の表はその説明力を数字的に見たものである。

この結果によると、アテネ大会と北京大会における G7および韓国のメダル獲得数の差は、その殆どがその国の GDP の大きさによって説明される。また、日本の国力に応じたメダル獲得数は、金メダルが概ね15~17個、メダル総数で45~50個というところが妥当な数字である。日本と同じように、実績が理論値より低い国はカナダである。

報道によると、「鳩山首相は、冬季五輪でメダル5個を獲得した日本選手団を評価。そのうえで「国として強化策を考えたい」と語った。」と伝えられている。強化対策の目標は上のような数字に置いて、選手団にはもう少し頑張って貰わねばならないであろう。

2010/02/06

Are we to be made by the labels people stick to us?

Smashing and worrying experiments about how we can be made by the labels people give us.

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In Israel, 105 soldiers were put into a 15 week intensive commander training programme. Each soldier had a (fake and randomly assigned) previous assessment about his command potential and trainers were given this (fake) information before the session. The trainees did not know that their fake assessments were given to the trainers, and the trainers did not know that the assessments were bogus and randomly given. After 15 weeks, the standard examination to gauge the effectiveness of the programme was administered to all the trainees, and those soldiers (fakely) assessed as "high" command potential scored an average of 79.98, while those assessed as "average" and "unknown" scored averages of 72.45 and 65.18, respectively.

Eden, D. and A. Shani (1982), "Pygmalion Goes to Boot Camp: Expectancy, Leadership and Trainee Performance", J. of Applied Psychology 67, pp.194-99

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51 men and 51 women volunteers participated in a "communication" experiment. Each man was given the CV of a randomly assigned woman and her photo with whom he was to have a telephone conversation. Although the CV was genuine, the photo was not of hers, but the one the experimenters prepared; it was either one of a very pretty woman or one of an ordinary looking woman, randomly assigned. The men were asked to evaluate the women whom they were to talk, in terms of social desirableness, based on the CV and the fake photo. Neither men nor women knew that the men saw fake photos (It does not take a psychologist to guess that the men who saw a photo of a pretty woman would evaluate the women more positively and later engage in telephone conversation more enthusiastically). After the telephone conversations, the experimenters cut all the men's parts from the conversation recordings, leaving just the women's parts. Then further 12 people (who were unrelated with any of the men and women) were asked to listen to these recorded clips (of women's parts) and to evaluate those women based only on the recordings. The result was correlated with the original evaluations made by the men before the conversation.

Snyder, M., E. Decker and E. Bercheid (1977), "Social Perception and Interpersonal Behavior: On the Self-Fulfilling Nature of Social Stereotypes", J. of Personality and Social Psychology 55, pp.656-66.

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Both the episodes are found in Brafman, O. and R. Brafman (2008), Sway, Doubleday



IT投資の効果を実証する

平野雅章(2007)『IT投資で伸びる会社、沈む会社』日本経済出版社


情報投資(IT投資)の効果は、経済全体レベル(マクロレベル)では生産性の向上として測定されていますが、企業レベル(ミクロレベル)では必ずしも測定されていません。実証研究と称するものも、その多くは効果を(担当者/アンケート回答者の)主観で測定していて、本書の出版当時(2007年)、企業業績のような客観的な効果を測定している実証研究は殆どありませんでしたが、今もその状況は変わりません。

本書は、著者と共同研究者による日本企業のIT投資と企業業績についての客観的データによる実証研究を基に書かれています。学術論文・学会発表のレベルのデータ分析の結果を、ビジネス人の方々に分かり易く説明することを目指しました。

主なポイントは、
(1)IT投資と企業業績との間には緩い相関関係が見られるが、バラツキ(分散)が大きすぎて、IT投資以外の要因で企業業績を説明する必要がある。
(2)組織能力が高い場合には、IT投資と企業業績との相関が高く、IT投資のリターンを期待できる。
(3)組織能力が低い場合には、IT投資と企業業績との相関は見られず、回帰線を引くと右下がりになる(IT投資をすればするほど業績が落ちる)場合が多い。
(4)組織能力は「組織IQ」という尺度で測る。
(5)「組織IQ」の向上法
などです。

企業におけるERPなどのIT投資が必ずしも効果を上げていないと感じられている方々は、是非手にとって読んでみてください。IT投資のリターンが上がらない理由が分かり、リターンを向上させるための重要なヒントを得られます。

2010/01/30

【書評】 『コークの味は国ごとに違うべきか』

パンカジ・ゲマワット著(望月 衛:訳)、文芸春秋社、2009
Pankaj Ghemawat (2007), Redefining Global Strategy: Crossing Borders in A World Where Differences Still Matter, Harvard Business School Press


かつては、レヴィット(『市場のグローバル化』1983年)や大前(『トライアド・パワー』1985年)が、そしてケアンクロス(『距離の死』1997年)を経て、最近ではフリードマン(『フラット化する世界』2005年)等の論者が、世界は均一化してきていると主張していて、恐らくこれは多数の認識であろう。しかし、ハーバードビジネススクールの俊英教授ゲマワットは、データに基づいて、この多数派説に真っ向から異を唱える。 

データに依れば、グローバルなM&Aが喧伝されているにも拘わらず、2000年代初頭において、対外直接投資が世界の固定資産形成に占める割合は10パーセント以下であるし、国際電話比率や海外からの観光客比率、海外株式投資比率などいずれも10パーセントを大きく超えることはない。また、トヨタやウォルマートに代表される多くの多国籍企業は、その利益の多くを母国で得ている。すなわち、実際の世の中は、ある程度グローバル化しているが、完全にグローバル化(またはフラット化・均一化)している訳ではない。この状態を著者は「セミグローバル化」と名付ける。

従来の国際戦略論は、世界がグローバル化したというイデオロギーに基づいて作られているので有効ではないと断じ、著者はセミグローバル化した世界という事実を前提とし、「市場や世界の均一化」ではなく「国や社会の間に厳然と存在する差異」を利益の源泉と考える新しい国際戦略論を提示する(原題は『国際戦略の再定義』)。

前半では、以上の事実確認とともに、国や地域ごとの差異を測定・考察するための枠組み(CAGE)とクロスボーダー戦略の有効性を評価する枠組み(ADDING)が説明され、後半では、セミグローバル化した世界で差異を活用するための3つの戦略オプション(AAA)が解説されている。経営者やビジネスマンが、「国際化して利益をあげられるのか」「そもそも何のために国際化するのか」等を根本的に考え直すための強力な枠組みを提供している。

翻訳は概して適切だが、文中に ADDING の原語の説明がほとんど無いことがやや不親切で残念。また、著者が万有引力の法則を間違っている(引力は「距離」に反比例ではなく「距離の2乗」に反比例する)のはお愛嬌である。

[週刊「ダイヤモンド」誌 2009年8月15/22日号 p.124 掲載を一部編集]

2010/01/25

Carrots work better than sticks?

An interesting application of the findings from behavioural economics.

According to the article in the "Economist", Chinese managers in an electronics factory responded more positively (eagerly) to the bonus scheme when they were entitled to a bonus but would be deprived if they had failed to achieve the target, than when they were offered the same amount if they had achieved the same target. The results were consistent over the time.

People react so differently to different "wordings" of the same condition. I should have learned this much earlier ...


http://tinyurl.com/yd9xlyk

2010/01/22

トヨタのリコール

本日、米国におけるトヨタ車のリコールが伝えられた。今回は、230万台、昨年秋以来426万台のリコールを実施中。昨年は夏に中国でも69万台のリコールをしている。いずれの場合も現地生産車が対象だそうで、こうなると偶発的というより、組織的な問題の可能性が大きくなる。

トヨタの場合は、トヨタ方式といわれる生産管理の仕組みがしっかりしているとされていて、他の日本企業と比較した場合には属人的な管理の要素は少なめなのかも知れないが、それでも海外にオペレイションを持っていって、急速にスケイリング(規模増加)を行う能力には不安がないとは言い切れない。日本企業は、仕組みの構築に力を入れるより、優秀な従業員を採用・社内育成することにより、属人的な管理でオペレイションを行おうとする傾向がある。すなわち「組織は人なり」だと思っている。しかし、このやり方が機能するためには「適切な人材の十分な供給」と「相応しい育成方法が分かっている」ことが前提となっていて、これらの条件が満たされない場合には、大変に厳しいことになる。

因みに、筆者は、企業などの組織体から組織成員を除いた残り(意思決定ルールやコミュニケイションのネットワーク。経済学で言うTFPのようなもの)を組織と定義している。