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2015/03/27

アナリティックスと保険の将来

ビックデータとアナリティックスの普及により保険対象のリスクをより正確に見積もることができるようになると保険産業はどうなるであろうか?

そもそも保険とは、同じリスクカテゴリの人々をまとめて確率的に起こる事象に対して集団的に保証するシステムである。以前は、保険対象のリスク見積が難しかったので、どんぶりセグメントで十把一絡げにしてきたが、リスクを細かくセグメンテーションができるようになってみたら、実は大きいリスクを抱えた保険対象と小さいリスクしか持ってない保険対象が同じプールに入っていたことがわかったとする。小さいリスクの保険対象に、大きいリスクの保険対象と同じ保険料を支払うことは合理的ではないことは明らかである。そこで小さいリスクの保険対象を持っている人たちはそのセグメントだけで安い保険料率を決めたいと望むのは当然である。しかし、セグメントの細分化を可能とする情報に基づいて合理的に行動すると、社会全体としてはどのようなことが起きるだろうか?

疾病保険では、遺伝子などの情報により一人ひとりのリスクファクターが明らかになり、同じリスクのグループごとに異なった保険料率を適用することになろう。こうなると、小さいリスクの人たちのセグメントでは正常な保険が成立しうるが、大きいリスクをもつ人たちのセグメントでは保険料率が高くなりすぎて、保険に入らない(入れない)人も出てくるであろう。

自動車保険では、運転者の性格や事故の履歴、飲酒癖などは非常に重要なリスクファクターとなろう。

http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21646260-data-and-technology-are-starting-up-end-insurance-business-risk-and-reward
には、運転習慣(どの位急ブレイキを踏むか、など)を測定するデヴァイスをクルマに設置して、これに応じて保険料率を変動させる話が出てくる。

安全運転をする人のセグメントと危険な運転をする人のセグメントでは、当然、保険料率は異なってくるであろう。安全運転をする人のセグメントから中位のリスクの人のセグメントでは正常な保険が成立しうるが、大きな事故リスクを持ってる人のセグメントでは、おそらく保険料率が高くなりすぎて、保険は成立しなくなると思われる。つまり、このセグメントでは保険料率が高いので多くの人は保険に入らず、その結果非常に危険な人たちが任意保険なし(自賠責のみ)で車を運転し廻ることになる。こうなると、非常に危険な運転をする人のセグメントについては法律で運転を禁止するか、普通の人々は災害保険に入るしか手の打ちようがなくなるかもしれない。

生命保険については、健康に関する遺伝情報とそれからその人の危険な行動するかどうかの情報からリスクファクターを割り出すことになる。この場合も、リスクファクターが小さいセグメントでは正常の保険が成り立つが、リスクの大きい人々のセグメントでは保険は成り立たなくなる。

いずれの場合においても、リスクの見積もりが正確で細くなるにつれ、そもそもの保険の概念が変わらざるを得ない。従来からの、ドンブリセグメントによる保険は成り立たなくなるであろう。米国のオバマケアでも議論されたが、リスクファクターの大きい人に高い保険料を適用できない保険会社が、リスクによるセグメントごとに細かく保険料を設定できる保険会社に対する競争に負けるのは必定である。しかし、リスクプロファイルの大きな人を保険から排除するとなると倫理的な問題もある。リスクファクターの大きな保険対象は政府が担うしかなくなるかもしれない。

現在私も、将来の明確な見通しを持っているわけではないが、保険産業は大きな構造変革に見舞われることはまず間違いなかろう。情報技術を活用した革新的な解決法をもたらす企業には大きなチャンスが期待できる。ワクワクする時代である。

2014/12/04

成熟技術における技術革新 ー空調ー

空調は今やわれわれの社会生活や産業に不可欠なものとなっているが、これは成熟技術であり、ここ何年かにわたって画期的な技術革新は起こっていない。原理そのものは何十年も同じままである。空調エンジニアリング企業は、既存技術の効率化に知恵を絞っているが、ここまで成熟化してくると、飛躍的な効率の向上は難しい。業界全体が、クリステンセンが指摘する、既存技術の典型的な状況にあると言える。

クリステンセン(2001)『イノベーションのジレンマ』

しかし、地球温暖化が真実だとすれば、今後40年にわたって温帯・熱帯地域の人口が急速に増加することはほぼ確実なので、設置と運用コスト(エネルギー費用)の点で画期的に安価で簡単な空調技術の需要が爆発的に増加することは間違いない。そして、大きな需要があれば、遅かれ早かれ必ず技術革新が起きると見ている。このような従来技術の延長線上にはない、全く新しい技術がでてきたときに、専ら従来技術の精緻化に特化してきた企業群があっという間にシェアを失うことは、歴史が示す通りであり、このことはクリステンセンの前掲書にも詳しい。

そう考えていたら、先週の The Economist に、太陽光を反射する膜をつかって、効率的に室内熱を宇宙に輻射する技術についての記事があった。

Electricity-Free Air Conditioning

勿論未だ研究室段階で実用化までの距離は遠いが、「空調の可能な技術は従来方式だけでない」という好例である。技術革新というのは、一旦弾みがつくと、あちらこちらで次々に新しいアイディアが出て、どんどん進展するようになる。今まで、変化に乏しく、どちらかというと安定した(あるいは退屈な)状態にあった空調業界も、エキサイティングな時代になりそうだ。

2013/01/21

アウトソーシングの終焉?

来月、米国ノースカロライナでコンピュータ工場が操業を始める。工場主はレノボ。
「製造業は、アウトソーシングやオフショアリングから、先進国に戻りつつある」という The Economist 誌の特集記事。生産基地を中国より更に労賃の安い地域に求めているようでは、世の中から半周遅れとなることは否めない。

Special report: Outsourcing and offshoring

2012/09/17

Roger Fisher / ロジャー フィッシャー

Roger Fisher of his Harvard Negotiation Project fame (Getting to Yes) died 25th August, aged 90.  His disciplined approach has proved its effectiveness through countless number of difficult international disputes, including Reagan vs Gorbachev negotiation, the Camp David Negotiation, etc.

As Japan is presently filled with difficult and contentious disputes within (e.g., nuclear generation, consumption tax) as well as with outside (e.g., Korea, China, Russia), Mr Fisher's intervention would have been greatly appreciated to find valid negotiated solutions.  At least, someone could try his approach.

ハーヴァード交渉プロジェクトのロジャーフィッシャー氏(『ハーバード流交渉術』)が、8月25日に90歳で亡くなった。彼のアプロウチは、リーガン大統領とゴルバチェフ大統領の交渉や、エジプトとイスラエルを巡るキャンプデイヴィド交渉等の、数多くの困難な国際紛争で威力を発揮した。

日本は今、国内(原発、消費税など)、国外(韓国、中国、ロシアなど)共に見通しのつかない問題山積である。フィッシャー氏が生きていて介入してくれたら、有効な解決策を捜すのに大いに助かったことであろう。誰か、フィッシャー流を適用してみないものか。



2012/08/16

Self-Driving Cars 「自動」車

Although we saw a self-driving car video footage by Google last year, and this May the State of Nevada approved a licence to the company to test self-driving vehicles on the public road, the industry seems still skeptical about its near future.  Has anybody seen similar cases concerning a new technology where the incumbents remain skeptical only to be driven out by the entrants from a totally different industrial sector?

Google による「自動」車のヴィデオが紹介され、5月にはネヴァダ州は同社に公道上で「自動」車をテストする免許を与えたが、業界関係者は実用化に懐疑的なようである。今までに、新技術の可能性に懐疑的だった既存企業が、全く異なる産業からの新規参入者によって駆逐されてしまったという似たようなケイスを思い起こされる読者もあろう。


Self-Driving Cars Coming Our Way, But Don't Throw Out Your License Just Yet (Reuters/Huffington Post)

2011/10/22

Perils of International Expansion 国際化の危険

There have always been evidences against the diversification by firms.  Now an evidence concerning law firms against international expansion (ie, geographical diversification).  According to the Economist, as law firms increase the ratio of lawyers stationed abroad, their profit per equity partner decreases.  Diversification of all sorts creates increased information processing load for the organisation and its managers, and easily surpasses their information processing capacity, resulting in poor and/or delayed decisions.  Focusing seems to make sense here as well.

企業の多角化を否とする証拠は常に存在するが、今回は、法律事務所の国際化(=地理的多角化)を否とする証拠が紹介された。『エコノミスト』誌によると、法律事務所が海外駐在の弁護士の割合を増加させるにつれ、(所有権を持つ)パートナー1人当たりの利益は減少する。多角化というものは、組織とマネジャーに対する情報処理負荷を増加させ、彼らの情報処理能力を超えてしまいがちとなる。そうなると、意思決定の遅れや間違いが発生する。ここでも、集中はペイする戦略のようだ。

http://www.economist.com/node/21532313