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2015/06/19

【書評】『メンバーの才能を開花させる技法』

Wiseman, Liz and Greg McKeon (2010), Multipliers, HarperCollins
関美和・訳、メンバーの才能を開花させる技法、2015、海と月社

リーダーシップは、難しい。これだけ多くの図書やセミナーが氾濫していながら一向に減る傾向が見られないということは、(評者の教えるビジネススクールを始め)これらの処方の効果がまるで上がっていない、すなわち、リーダーシップに関する図書やセミナーや学校は限りなく無意味だという証拠に他ならない。このような状況を反映して『The End of Leadership*』なんて本迄ある。

* Kellerman, B. (2012) The End of Leadership. HarperBusiness
邦訳は、『ハーバード大学特別講義 リーダーシップが滅ぶ時代』だが、内容的には『リーダーシップ教育の終焉』が適切。

本書の原著は5年前に刊行され米国アマゾンの書評でも非常に好評だった、リーダーシップの良質なハウツー本だが、この度邦訳された。ポイントは、「多くのリーダーにとって、才能に溢れたメンバーを自由に集めることができるわけでなく、実際には、現有のメンバーから如何に多くの才知と努力を引き出して組織のために貢献して貰えるか、が成否の分かれ目になる」という認識である。著者らの調査によれば、人々は、Multiplier 型リーダーの下では、Diminisher 型リーダーの下に居るときに比べて、自ら持つ能力の2倍以上を発揮しているという。だとすると、増幅型リーダーは2倍の部下を持っているのと同じ事になるではないか! 

そこで、できるだけ才能のある人々を見つけて自分の組織に引きつけ、個々人の才能に応じて各人の限界まで能力を活用して貰うようにする。課題は設定だけして、(例え自分が解を知っていても)自分は引き下がり、解決法はメンバーに考えさせる。必要に応じてサポートはするものの、課題のオーナーシップはメンバーに渡して、責任も持たせる、等々、Multiplier 型リーダーになるには下準備と自制心が結構大変である。


本書は、実は、組織のヴィジョンやミッションは既にリーダーが自身で考え抜いていて、それを実行する戦略やその実施に組織メンバーの能力をフルに活用しようとする段階のノウハウ集なのである(その意味では人心操作に近づいている)。だから、本書の教えが実際に効果を発揮するかどうかは、ビジョンや目的についての熟考やメンバー各人の能力の棚卸など、リーダーが事前にどれだけ下準備をしておくかに掛かっている。これは、良い学校教師がする念入りな授業の準備と同様で、つまるところ、リーダーシップとは(もともと各人が持っている才能を開花させるという意味での)教育でもあるのだ。

2015/04/05

規模と複雑性の罠

巨大なグロウバル銀行の収益性が低下して、悲惨な状態になっているという(The Economist、2015年3月7日号)。経営の複雑性、地元銀行からの競争圧力、規制強化の3つの原因が挙げられている。

第1の原因は、複雑性であるが、巨大で複雑な組織というものはそのマネジメントにとてもコスト(経営者のアテンションと時間とエネルギー)が掛かるのである。企業などでは余り議論されていないようだが、しばしば、この複雑性に帰因する問題は人智の限界を超えることになりかねず、巨大化による規模の経済を打ち消してしまう。

ソニーの不振の原因の1つもここにあると考えられる。家電と半導体とデヴァイスとエンターテインメントとネットワークと金融を同じ屋根の下に入れるのは、スーパーマンのような経営者をしてもとても困難であろう。古くは経営学者の Penrose も、マネジメントの複雑さが企業成長の制約になることを指摘している。

逆にアップルの好調の原因の1つは、同社の製品ラインおよび事業領域が極めて限られていることにあると考えられる(しかし、今後もこの優位性が維持されるかどうかは、経営者次第。既に、遠くに暗雲が見える)。マーケティングコンサルタントの Reis もフォウカスの重要性を繰り返し指摘しているし、筆者の提唱する組織IQにおいても「組織フォウカス」は5つの原則の内の1つとなっている。

製品ラインや事業分野がフォウカスされていることにより、意思決定の複雑さが減少され、意思決定に関わる情報処理の負荷が小さくなることの利益は計り知れない。企業の多角化や国際化において必ずしも陽表的に評価・議論されていない側面であり、注意が肝要である。

組織マネジメントにおいては(も?)、シンプルイズベストである。

2015/03/29

組織の終わり方(の覚悟)

米国の銀行規制当局(Federal Deposit Insurance Corporation)は、影響力の大きな銀行に対して、一定の条件を満たさなくなったときにどのように銀行を清算するのか、そのやり方を示すように求めている。

http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21647312-regulators-desire-make-banks-easy-kill-determining-how-they

つまり「組織の終わり方を自分で考えなさい」ということである。巨大銀行の場合には、これはシステミックリスクを避けるあるいは軽減する観点から重要なのであるが、その他の組織にとってみても、これは素晴らしいことではないかと思う。

特に日本の組織は、永遠に続くこと自体があたかも良いことであるかのごとくに思い込まされている節がある。Barnard を引用するまでもなく、そもそも組織とは目的があって作られるべきものであるので、その目的を達成したならば解散して、それまで使用していた資産やお金や人材などを他の目的のために解放ことするが、社会全体から見れば望ましい姿である。であるから、組織の目的は、それが達成されたのかどうかが明確にわかるような形に定義すべきであり、「世の中を良くする」というような、達成できたかどうか分からないようなぼんやりした定義はよろしくない。世の中には、ただ存在することだけが自己目的化して、社会的に積極的な意義を果たしていないと思われるゾンビ組織があまりにも多すぎる。目的を達成したらば、直ちに組織は解散または清算すべきである。たとえ同窓会のように継続して存続することが前提の組織であっても、例えば「会員の満足度」などを定量的に測定して、目的が十分に達成されていない時には、解散して出直すなり、役員を入れ換えるなりすべきであろう。

組織を作るときには、「何が達成されたならば解散するのか」、そして「その時にどのように清算するか」、サンセット条項のようなことを定款に含めることが望ましいといえよう。財団や社団の場合には、解散時の財産の処分の仕方を定款で定めるようになっているが、これでは「どういう時に解散するのか」は決められていない。 企業は、その目的を明確に定義し、目的達成時には解散するよう定款に定め、その時の清算法も規定しておくことが社会の効率化のためには望ましいと言えよう。

2015/01/04

「創造的人材の育成」について

過日、野生のシジュウカラの集団において知識が伝承され、また、個体は集団の知識に同調(文化を伝承するという実験結果を紹介した。

実験では、森の中に右からも左からも開けられるえさ箱を複数置いておくと、シジュウカラは、集団毎に右または左からえさ箱を開けるやり方を共有する(「文化」と呼ばれる)が、このことは他の野生動物の集団でも観察されていて、これ自体は新しい知見ではない。驚くべきは、例えば、右からえさ箱を開ける集団にいる個体を、左からえさ箱を開ける集団に入れると、この個体は新しい集団に同調して、左からえさ箱を開けるという行動を採るようになる、ということである。つまり、シジュウカラは集団内で同調行動を採っているのである。

集団の生存戦略として考えると、少数の探索的(創造的)シジュウカラの個体がえさ箱を調べて開け方を発見するのだが、集団内の多数の個体は、改めて新しいえさ箱の開け方を探索することなく、他の個体により発見された開け方を模倣して、このやり方が集団内で共有される。もし、集団が同調者(模倣者)のみで構成されていれば、えさ箱を開ける方法は発見されないままとなる。他方、もし集団が探索的(創造的)個体ばかりで構成されていれて他の個体から学ぶことがなければ、各個体がそれぞれ探索行為を通じてえさ箱の開け方を発見することになる。この二つの極端なケイスはいずれも集団生存のためには効率的でなく、一定割合の個体が探索的(創造的)で新しいやり方を発見し、多数の個体がこれら探索的(創造的)個体の発見を模倣することが、集団の生存戦略としては効率的である。恐らく、進化過程を通じて、集団において最適な探索的(創造的)個体の比率を持つ種が、生き残ってきたと考えられる。


世の中は、ビジネスでも教育でも「創造的人材を育成する」というテーマが流行であるが、人類が地球でこれだけ生存し、多種を支配してきたことを考えると、人類における探索的(創造的)人材の現在の自然の比率は、恐らく生存戦略として効率的なのだと考えられる。勿論、各産業や社会の場面に応じて、最適な探索的(創造的)人材の比率は異なるであろう。とても、探索的(創造的)な外科医に手術をして貰いたいと思う患者は多くないであろうし、区役所の窓口の担当者がとても探索的(創造的)で、案件毎に異なる処理をされては困るであろう。とても探索的(創造的)なパイロットが操縦する飛行機は、事故も多いであろう。また、グーグルであればより大きな探索的(創造的)人材比率が最適であろうし、安定的な業界であればより小さな探索的(創造的)人材比率が最適であろう。いずれにしろ、万が一、国民の全員はおろか、大多数が創造的人材であるような社会になれば、社会全体の効率が極めて悪くなり、社会そのものの生存に関わるであろう。The Economist 誌も「創造性を強調する職場は問題が多い」としているし、J.G. March も exploration と exploitation とのバランスを強調したが、無闇に創造的人材を育成することが、社会・組織・集団の発展と生存に寄与するという保証は全くないのである。

2013/02/03

【書評】『ワーク・シフト』

Gratton, L. (2011), The Shift, Collins
池村千秋:訳(2012)『ワーク・シフト』プレジデント社


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もし、あなたの十代の子供達が「将来、ジャーナリストになりたい」「僕は、医者」と言ったら、親としてはどうアドバイスすべきだろうか?

これが、本書の元となったプロジェクトのきっかけだそうだ。著者は、英タイムズ紙の「世界のトップビジネス思想家15人」の一人に選ばれるなど、多くの賞を受けている、ロンドンビジネススクール教授(組織行動論)。企業・官庁スポンサーのコンソーシアムを組んで、2025年の仕事はどうなっているであろうか、と研究したまとめである。

まず、「技術」「グローバル化」「人口動態」「社会」「エネルギー・環境」の五分野にわたって、2025年の仕事のあり方に影響を与えると考えられる二十三のトレンド(たとえば、「都市化が進行する」「エネルギー価格が上昇する」など)が提示される。そして、 これらのトレンドを組み合わせることにより、2025年に世界のいろいろの場所にいるいろいろの職業の人々(例えば、ムンバイにいる脳脳外科医や、チッタゴンにいる米国人のソーシャルワーカーなど)について、  1990年頃の状況を振り返り、トレンドを現在から2025年に外挿して、彼らの仕事のやり方や生活の様子、何を考え、何が心配で、何が楽しみか、などの状況を一貫性のある絵として描いてみせる(多くの端布からパターンを生み出すパッチワークキルトに例えている)。これらの状況記述には、現在のトレンドがそのまま続いたときの悲観的なシナリオ5本と、現在のトレンドに対する積極的な介入に成功したときの楽観的シナリオ3本が用意され、最後に、筆者が有効と考える3つの対応法(「ジェネラリストから、連続スペシャリストへ」「孤独な競争から、協力して起こすイノベーションへ」「大量消費から、情熱を傾けられる経験へ」、筆者をこれらを「シフト」と呼ぶ)が説明される。

本書は読み物として刺激的にできているが、実は、環境について重要なトレンドを自分なりに加えたり、これに基づいて自分なりの悲観的なシナリオと楽観的なシナリオを作って、今何をすべきか考えるという、シナリオ計画法のワークブックとして使うときに、その真価を発揮する(著者もこれを奨めている)。ノウトを開いて、あなたとあなたにとって大切な人々の将来の仕事について、今後五年間に何をすべきか考えてみよう。

[本稿は、週間『ダイヤモンド』誌、2012年9月10日号、書林探索への投稿を基にしている]

2012/09/10

The Science of Conducting / 指揮の科学

According to a clever empirical study on the relationship between the conductor and the musicians, an assertive conductor adds value to the quality of the music only when his authority is accepted by the uppity musicians.  When he fails to command the musicians' respect, the performance is worse than that by  meeker conductor who let the musicians play by themselves.  Sounds familiar?

The result seems to have significant implications on management and leadership.  It would be certainly nice if the experiment is replicated with a larger sample (more excerpts).

指揮者と楽団員との関係に関する実証研究によると、支配的な指揮者は、自尊心の高い楽団員にその権威が受け入れられているときにのみ、演奏の質を高めることが出来る。しかし、楽団員の尊敬を得ることが出来なければ、その演奏は、消極的な指揮者が楽団員が自発的に演奏させたものに劣る。如何にもありそうな話だ。

結果は、マネジメントとリーダーシップに大きな含意がある。もっと大きなサンプル(試行数)で再試をやって欲しい。

http://www.economist.com/node/21562182

2012/06/02

Are sample biases significantly affecting psychological experiments? 心理実験とサンプルバイアス

A large portion of disciplines, such as psychology and behavioural economics, depends on experiments utilising university/college students as subjects.  If the sample bias discussed in the article (WEIRD: Western, educated, industrialied, rich and democtatic) was significant indeed, perhaps the whole past works including e.g. those by a Nobel laureate Daniel Kahneman would need thorough review.

心理学や行動経済学等多くの学問分野は、大学生を使った実験に依存している。もし本記事が論じるようにサンプルが持つ WEIRD(西欧的、教育水準が高い、産業社会、豊か、民主的)というバイアスの影響だ重要だとしたら、ノーベル賞学者のカーネマンを始め、多くの業績を見直す必要が出てこよう。

http://www.economist.com/node/21555876

2012/04/16

Social Status and Health 社会的地位と健康

The studies at Whitehall in London had shown that the higher the mandarin's rank, the longer his life.  Now it has shown that (at least for female macaques) the working of genes differ dependent on one's social standing which affects her immune system, hence her health.  The hierarchical organisation seems bad for your health, unless you are at its top.

英国の官僚等における研究では、組織内の高位者ほど健康で長生きであることが分かっていたが、メスのマカクを使った実験により、グループ内の地位の高低により、免疫システムを司る遺伝子の働き(したがって、健康)が異なることが分かった。階層組織は、その頂点にいる人以外にとっては、健康に良くないらしい。

http://www.economist.com/node/21552539/print

2011/12/07

【書評】Race against the Machine

Erik Bryjolfsson and Andrew McAfee (2011)
Digital Frontier Press

MITの E. Brynjolfsson 教授と A. McAfee 研究員による近著。

米国では、長期にわたり失業率が下がらず、家計収入の中央値が下がり続けている。リーマンショック以降は、企業収益や一人当たり GDP などは回復したにもかかわらず、この傾向が続いている。このことは、景気回復が雇用増大に結びつかず、さらに所得配分がいびつになりつつあることを示している。実際に、過去XX年間で見ると、一人当たり所得の中央値は下がり続けているものの、上位1%は、2002年以来の全米の富の増加分の65%を獲得し、1995年から2007年の間に上位0.01%の所得は3%から6%に上昇している。

雇用が回復しないことの原因について3つの理論があるとしている。1つめは、景気循環説で、大不況後の回復に時間が掛かっているだけで、何ら問題はないとする。2番目は、スタグネイション説で、鉄道・電気・内燃機関などに相当するような大規模な技術革新がなくなり、経済そのものの成長力がなくなってきたのが原因だとする。3番目は、雇用喪失説で、逆にITを中心とする技術革新の速度が速く、従来からの仕事が急速に機械に置き換えられている結果雇用そのものがなくなっているとする。著者等は、雇用喪失説の立場を採る。

ITの進歩により、従来コンピュータは苦手で人間の方が優位であるとされてきた領域で、人間の優位性が崩れつつある。例えば、グーグルは無人自動車を実際の道路で走らせたし、リアルタイムで英語・スペイン語・中国語間の翻訳をするシステムも実用化された。また、IBM開発のコンピュータは、チェスマスターのカスパロフを破っただけでなく、Jeopardy! という文脈まで理解せねばならない知識ゲームで人間のチャンピオンを破った。ムーアの法則に代表されるような、iTの指数的発展の結果、従来人間の領域とされた分野が次から次へとITに置き換えられつつある。筆者らは、企業業績が回復しても雇用が増えないのは、ITによる置き換えが進みつつあるからだと考える。また、ITの進歩に伴い、競争の勝者と敗者の差がよりはっきりするようになっている(economics of superstardom)と指摘する。人間は、このような進歩に対抗する(race against the machine)ことは不可能で、ITと一緒に競争する(race with the machine)べきだとする。

筆者らは、個人レベルの教育と同時に、ITの力を活用するために組織投資も必要だとするが、特に具体的な内容はない。巻末に、教育・起業・投資・制度 などについて、19項目の提言をしている。日本においても雇用が長期にわたって低迷し、企業業績は回復していても社会の閉塞感は晴れない状態が続いている。本書は ITを活用し、ITから利便性を得るための方策について考えるに際し、重要なきっかけを与えている。

今の処、電子書籍のみで、紙媒体は販売されていない。一昨日 ICIS (International Conference on Information Systems) 2011 で Brynjolfsson 教授に会ったときに聞いたところ、翻訳の話が進行中だという。

2011/10/07

(Further) About Jobs (今更)ジョブズについて

As there have been so many articles about Steve Jobs already, I have been feeling reluctant to further add anything.  However, I have decided to react to the article by Nobuo Ikeda.

Ikeda maintains that the greatness of the magician resides not in his technological nor visionary genius, but in his capability to realise his ideas into product design.  Because of this emphasis on details, he deconstructed the hardware-software amalgamation and largely outsourced the production function, so that he could exercise the overall control throughout the company's value chain.  It was true.  I agree.

What I like to add is that Jobs extremely narrow-downed Apple's product range.  This is again a good example of focusing.  You should keep the required information processing load below your information processing capacity.  In many large firms, the information processing is shared by number of people.  In Apple, basically Jobs was the only information processor concerning important product dimensions.  Focussing both on the value chain and the product range, hence.  Great!!  Perhaps, many of Japanese manufacturers who tend to easily succumb to the temptation of product line proliferation could learn a thing or two.


ジョブズについては既に多くの記事があり、今更付け加えるのも、と躊躇していたが、池田信夫氏の記事に反応した。

池田氏は、ジョブズは技術的天才でもなければ、ヴィジョナリでもなかった。アイディアを商品化する能力に優れていたのだ、とする。細部に拘るために、もともとはハードとソフトの統合メイカーだったものを、製造部門はアウトソースしておいて、ヴァリューチェイン全体をコントロールしようとした。その通り。賛成だ。

私が付け加えたいのは、アップルの製品群が極端に少ないことである。これは集中の好例である。情報処理負荷は、情報処理能力以下に抑えねばならない。多くの企業では、情報処理は複数の人が担っているが、アップル製品に関する主要な情報処理はジョブズが担っていた。したがって、ヴァリューチェインと製品群についての集中化。素晴らしい! 直ぐに製品ラインを拡張しがちな日本の製造企業も、学ぶことがあろう。

2011/10/03

「HP ウェイ」はどこに行った? Where Has the "HP Way" Gone?

HP は、Léo Apotheker を就任11ヶ月でクビにした。1999年以来6人目の CEO だ。HP を偉大な企業たらしめていた「HP ウェイ」は、一体どこに行ったのだろう? The Economist 誌によると、外部からスター経営者を招聘すること自体が間違っているという。


HP fired Léo Apotheker after only 11 months.  He was the sixth CEO of the firm since 1999.  Where has the "HP Way" gone that had made HP such a great company?  According to the Economist, evidences show that recruiting star CEOs from outside is totally wrong.

"... An unpublished paper presented to the annual conference of the American Accounting Association in August by Richard Cazier of Texas Christian University and John McInnis of the University of Texas at Austin ... studied 192 CEOs who had been brought in from outside between 1993 and 2005. They discovered that companies usually recruit CEOs from companies that have done well in the past—no surprise there—and that they usually pay them a fat premium. But then comes the rub: the pay premium is negatively correlated with the future performance of the firm that does the hiring. In other words: the more dazzling the outside recruit, the worse he performs in his new role."


2010/12/29

Team IQ / チーム IQ

Thomas Malone of MIT and his colleagues found that the performance of small groups/teams is not co-related with the IQ level of the team's members nor that of the cleverest member of the group/team. The factors significantly influence the performance are:
- Members' social sensitivities,
- How equally the conversation is distributed among members, and
- Ratio of female members!


MIT Malone 教授達は、小集団の業績が、成員の平均IQや、チームの中で最も高い成員のIQとは関係ないことを発見した。業績に関係した3つの要因は:
・成員の社会的感受性(EQ?)
・発言が成員間で平等である程度
・女性成員の比率


2010/09/27

ITと仕事のスキル


一般には、ITの普及と共に必要とされる仕事のスキルレベルが向上し、要求スキルレベルの低い仕事は機械化されると考えられる傾向がある。しかし、ごく単純な作業は、逆に機械化が難しい場合も少なくない。

The Economist (September 11th 2010) の記事は、洗ったタオルを畳む作業の例を冒頭に上げ、このような仕事は必要なスキルのレベルは低いものの、ロボットより人間の方が遙かに上手いと指摘している。同記事によると、IT投資の結果、スキルレベルの高い仕事(専門職等)とスキルレベルの低い仕事(単純作業)の労働は増え、中レベルの仕事(秘書、工場の監督等)の労働がコンピュータに置き換えられ、これは国を問わないという(右図は同記事より)。

この現象は、幾つかの問題点を提示している。

まず、これからの組織設計をどう考えるか? 中間的なスキルはITにより置き換えることを前提とすべきか?

次に、教育の効果をどう考えるか? もし中途半端にスキルレベルを上げることが失業につながるのならば、例えば社会的に高校卒を許すべきではないのか(つまり、中卒か、大卒のみ)?

最後に日本では社会の二分極化が問題となっているが、これは日本に限った問題ではないのか? これが(しばしば仮定されているような)社会制度の欠陥ではなく、IT投資に起因するのであれば、どのような対策や対処法が可能なのか?


2010/08/31

動物と組織

エコノミスト誌(2010年8月14日号)の記事によると、アリや鳥の群れ行動を経営問題に応用できるようになってきたという。アリの集団行動をシミュレイトして、トラヴェリングセイルズマン問題(セイルズマンが、指定された都市を1回ずつ巡回する最も効率的なルートを求める、オペレイションズリサーチの問題)に適用したり、鳥が他の鳥を見て餌を探す行動の分析結果を、画像分析や医療診断等に応用できるという。さらには、集団で機能するロボットも研究されている。脳も全体の働きを司っている部位がある訳ではないので、アリや鳥の集団を使ってより理解できるようになるかも知れない。


自律分散的組織も、アリや鳥の群れ行動から学べることがありそうである。

もう一つ、同号には、犬が居ると人間の組織行動がより協力的になり、業績が向上するという実証研究が紹介されている。オフィスでも犬を飼うべきだろうか。

http://www.economist.com/node/16789216?story_id=16789216

2010/07/07

偽物を纏うと偽物になる?

この実験によると、クロエの偽物サングラスを掛けていると言われた被験者は、本物を掛けていると言われた被験者よりもインチキをする頻度が大きくなったという。ここでのポイントは、どちらも「本物」のクロエを掛けていたという点である。

これは、組織運営上重要な問題を提起している。また、ときどき、どうしても偽物の臭いがする人に会うのも、理由がない訳ではないかも知れない。

http://www.economist.com/node/16422414?story_id=16422414

Wearing a fake makes you a fake

According to the experiment, those subjects who were told that they were wearing a pair of counterfeit Chloé glasses cheated more than those who were told they were wearing real ones (in fact, all the subjects were given authentic Chloés).

This result has profound consequences on how we manage our organisations. And there may be a good reason when we feel someone is a cheat just by looking.

http://www.economist.com/node/16422414?story_id=16422414

2010/02/06

Are we to be made by the labels people stick to us?

Smashing and worrying experiments about how we can be made by the labels people give us.

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In Israel, 105 soldiers were put into a 15 week intensive commander training programme. Each soldier had a (fake and randomly assigned) previous assessment about his command potential and trainers were given this (fake) information before the session. The trainees did not know that their fake assessments were given to the trainers, and the trainers did not know that the assessments were bogus and randomly given. After 15 weeks, the standard examination to gauge the effectiveness of the programme was administered to all the trainees, and those soldiers (fakely) assessed as "high" command potential scored an average of 79.98, while those assessed as "average" and "unknown" scored averages of 72.45 and 65.18, respectively.

Eden, D. and A. Shani (1982), "Pygmalion Goes to Boot Camp: Expectancy, Leadership and Trainee Performance", J. of Applied Psychology 67, pp.194-99

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51 men and 51 women volunteers participated in a "communication" experiment. Each man was given the CV of a randomly assigned woman and her photo with whom he was to have a telephone conversation. Although the CV was genuine, the photo was not of hers, but the one the experimenters prepared; it was either one of a very pretty woman or one of an ordinary looking woman, randomly assigned. The men were asked to evaluate the women whom they were to talk, in terms of social desirableness, based on the CV and the fake photo. Neither men nor women knew that the men saw fake photos (It does not take a psychologist to guess that the men who saw a photo of a pretty woman would evaluate the women more positively and later engage in telephone conversation more enthusiastically). After the telephone conversations, the experimenters cut all the men's parts from the conversation recordings, leaving just the women's parts. Then further 12 people (who were unrelated with any of the men and women) were asked to listen to these recorded clips (of women's parts) and to evaluate those women based only on the recordings. The result was correlated with the original evaluations made by the men before the conversation.

Snyder, M., E. Decker and E. Bercheid (1977), "Social Perception and Interpersonal Behavior: On the Self-Fulfilling Nature of Social Stereotypes", J. of Personality and Social Psychology 55, pp.656-66.

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Both the episodes are found in Brafman, O. and R. Brafman (2008), Sway, Doubleday



2010/01/25

Carrots work better than sticks?

An interesting application of the findings from behavioural economics.

According to the article in the "Economist", Chinese managers in an electronics factory responded more positively (eagerly) to the bonus scheme when they were entitled to a bonus but would be deprived if they had failed to achieve the target, than when they were offered the same amount if they had achieved the same target. The results were consistent over the time.

People react so differently to different "wordings" of the same condition. I should have learned this much earlier ...


http://tinyurl.com/yd9xlyk

2010/01/22

トヨタのリコール

本日、米国におけるトヨタ車のリコールが伝えられた。今回は、230万台、昨年秋以来426万台のリコールを実施中。昨年は夏に中国でも69万台のリコールをしている。いずれの場合も現地生産車が対象だそうで、こうなると偶発的というより、組織的な問題の可能性が大きくなる。

トヨタの場合は、トヨタ方式といわれる生産管理の仕組みがしっかりしているとされていて、他の日本企業と比較した場合には属人的な管理の要素は少なめなのかも知れないが、それでも海外にオペレイションを持っていって、急速にスケイリング(規模増加)を行う能力には不安がないとは言い切れない。日本企業は、仕組みの構築に力を入れるより、優秀な従業員を採用・社内育成することにより、属人的な管理でオペレイションを行おうとする傾向がある。すなわち「組織は人なり」だと思っている。しかし、このやり方が機能するためには「適切な人材の十分な供給」と「相応しい育成方法が分かっている」ことが前提となっていて、これらの条件が満たされない場合には、大変に厳しいことになる。

因みに、筆者は、企業などの組織体から組織成員を除いた残り(意思決定ルールやコミュニケイションのネットワーク。経済学で言うTFPのようなもの)を組織と定義している。