かなり歳取ってきただけでなく、Steve Jobs のこともあり、余命を考えるようになった。「古典的な本で未だ読んでないものは、生があるうちに読まねばならない」という気がしてきて、長年、積ん読になっている本の山から、まず Vance Packard の "The Hidden Persuaders" (Pocket Books, 1957)(『隠れた説得者』、林周二・訳、ダイヤモンド社、1958)の埃を払って読み始めた。
眠る前にベッドサイドブックとして読み始めた(だから、いつ読み終わるか分からない)のだが、第2章で起きてしまった。
Packard は、何と、1950年頃には「生産量が多すぎて黙っていると売れ残ってしまうから、心理学などを使って、本来不必要な需要を喚起して不要品を欲望させる必要が出てきた」と書いているのである!!!
ご存知のように、ビジネス書の多くは(研究書でさえも)、「昔は生産量が限られていたので、生産者優位で、作れば売れた。しかし、最近は生産効率が増加し、相対的に消費者優位となってきたので、ただ作っただけでは売れず ...」という枕で始まり、「だから、今は XXX せねばならない、YYY をしてはならない ...」と自説を論ずる。
私もぼんやり受け入れていた(私は「価値観の多様化」は受け入れていない。これについては、別稿で書こう)が、1950年代には、もう既に「作れば売れる」時代は終わっていたのである。
では、作れば売れた「昔」とはいつ頃のことだったのだろう?
落ち着いて歴史を考えてみると、我が国中世の「坐」や欧州中世の「手工業ギルド」は、生産者によるカルテルであり、生産調整の機能を果たしていたと考えられる(大学も、教育サーヴィスの生産調整を行うギルドだった)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ギルド
http://ja.wikipedia.org/wiki/座
つまり、産業革命を待たずして、既に中世でさえも「作れば売れる」時代ではなかったのである。だから、まともにビジネスマネジメントを論ずるのであれば、「作れば売れた時代」などというものは、かつて無かったと言えよう。
系として、「作れば売れた昔」と「消費者に焦点を合わせなければ売れない今」とを対置するような論立てのビジネス書は、まぁ眉唾モノということになるのだろう。
勿論、今も昔も人気商品は作る端から飛ぶように売れていくのであり、小手先の消費者対策などよりも、売れる商品(またはサーヴィス)を作ることに集中すべきであることは言うまでもない。
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