2014/07/07

Doesn't practice make perfect in music?  音楽は練習しても仕方ない?

'The Economist' (July 5th, 2014) ran an interesting article titled "Practice may not make perfect".  It claimed that an article published in Psychological Science by Dr Miriam Mosing of Karolinska Institute in Sweden suggested the amount of music practice is not correlated with the music capabilities.

'The Economist'誌 (July 5th, 2014) は、「練習しても無駄かも」と題して面白い記事を載せた。これによると、スエーデン Karolinska 医大の Miriam Mosing 博士が、音楽の練習時間と能力とは相関しないと示唆しているというのだ。

http://www.economist.com/news/science-and-technology/21606259-musical-ability-dna-practice-may-not-make-perfect

This was fascinating.  I got curious enough to search for the original article to know more.  Then even more interesting things happened.

これは面白い。早速、詳細を知るために原論文を捜すことにしたのだが、もっと面白いことが起こった。

When I searched the web site of Psychological Science for Dr Mosing's article, somehow I did not find any.  So, I searched for her publications to learn that she, along with a few colleagues, had published an article in Personality and Individual Differences in 2013, titled "Psychometric properties and heritability of a new online test for musicality, the Swedish Musical Discrimination Test".  In it, the authors said that the training time and the music capability score are correlated with a 0.1% significance level, while there is a moderate heritability, based on a large study on Swedish twins.

Psychological Science 誌のサイトで、なぜか Mosing 博士の論文は見つからなかったので、彼女の業績を捜したら、2013年に数人の共著者と「Psychometric properties and heritability of a new online test for musicality, the Swedish Musical Discrimination Test」と題する論文を Personality and Individual Differences 誌に発表していることが分かった。著者らは、スエーデンの双生児を使ったデータを基に、練習時間と音楽能力スコアは 0.1%有意で相関があり、遺伝の影響は中位であると書いている。

https://www.researchgate.net/profile/Miriam_Mosing/publications

Wait a moment!  This is totally opposite of what the Economist said what Dr Mosing said!!

でもこれって、The Economist 誌が言っていることと、真逆ではないか!

Meanwhile, during my search in Psychological Science, I stumble into another article by three American researchers titled "Deliberate Practice and Performance in Music, Games, Sports, Education, and Professions: A Meta-Analysis".  In it, the authors said that deliberate practice explained 26% of the variance in performance for games, 21% for music, 18% for sports, 4% for education, and less than 1% for professions, and that deliberate practice is important, but not as important as had been argued.  But this means the performances in profession and education are scarcely related with deliberate practice.


さらに、Psychological Science 誌を捜している間に、3人のアメリカ人研究者達が書いた「Deliberate Practice and Performance in Music, Games, Sports, Education, and Professions: A Meta-Analysis」という論文に行き当たった。著者達によると、成績の分散のうち、練習時間の差によって説明できるのは、ゲイムで26%、音楽で21%、スポーツで18%、教育で4%、専門職では1%未満だという。練習は重要だが、今まで思われていた程は重要ではないそうだ。ということは、専門職や教育における成績・業績には練習は殆ど関係ないということだ。


http://pss.sagepub.com/content/early/2014/06/30/0956797614535810.abstract


So where is the truth?  Am I missing something?


一体真実は何処にあるのか? それとも、私は何か見落としている?


Another interesting thing is that the main stream media in Japan will hardly discuss this kind of topics.  Regardless of empirical evidences, openly suggesting that, if you are not gifted, there is not much point in spending a lot of time (and money) on practicing for professions, education, sports, music and games, obviously is not regarded as politically correct.


もう一つの興味深い点は、日本の主流メディアはこのような話題をまず取り上げないであろうということだ。実証データがあろうがなかろうが、専門職・教育・スポーツ・音楽・ゲイムにおいて、才能がなければ練習に時間(とお金)を掛ける意味はないとあからさまに示唆することは、日本ではポリティカリーコレクトとは見られないからだ。


2014/07/02

PACIS 2014 @ Changdu(成都)

6月25日〜29日に中国の成都で PACIS (Pacific-Asia Conference on Information Systems) が開催された。
http://pacis2014.org
昨年の済州島大会の参加者は500人超、今年の第18回大会の参加者は600人超で、最近参加者が急増している。Association for Information Systems* (AIS) の前会長 Vogel 氏は「間もなく、世界の経営情報学研究者の過半がアジア太平洋地域の出身となる」と言っているが、その日はそれ程遠くないであろう。その位、アジア太平洋地域には勢いがある。

*英語の「information systems」は、日本語の「情報システム」よりずっと意味が広く、ITの経営への応用やIT組織、ITガヴァナンスまで含み、「経営情報学」にほぼ対応する。したがって、上記 AIS の国内関連学会は一般社団法人 経営情報学会となっている。


開会式

残念だったのは、アジア太平洋地域だけでなく米州や欧州、アフリカまで含む全600人超の参加者の内、日本からの参加は僅か5人!だったこと。このような状態で、どうやって世界に伍して行くことができようか。

当方で把握している日本からの参加者は以下の通り(他に参加者がいらしたら、ご一報下さい)。

神岡太郎氏(一橋大学)発表者
Jaehyun Park 氏(東京工業大学)発表者
櫻井美穂子氏(慶應義塾大学大学院生)Doctoral Consortium 参加
李 振 氏(神戸大学大学院生)
平野(早稲田大学)National Representative, PACIS Executive Committee 兼 Mentor, Journal Joint Author Workshop



Park氏の発表
神岡氏の発表


国際会議でアイディアを発表したり、共同研究や個人的な交際をすることは、ソフトパワーであり、国防にも寄与する。現実に、中国本土・台湾・香港・韓国等の研究者達が、領土問題や歴史問題に関係なく、一緒に活躍している。日本の存在感は極めて薄いから、他の手段に頼ろうという議論も出よう。自戒も込めて、一層の努力が必要である。

次回の PACIS 2015(シンガポール)からは、投稿して採択されなかった論文の為のワークショップ(メンターが改善法について指導してくれる)となるストリームができる予定である。日本人にとっては投稿しやすくなるので、経営情報学会会員は、是非投稿を計画されたい。

今年の Journal Joint Author Workshop の参加者





2014/06/19

Twitter では、人間とロボットを区別できない!

ツイッターなどの比較的短く、履歴の浅い(遠い昔の話まで遡らないで直近の発言に反応する)発言は、チャットボットが得意とし、人間とチャットボットの区別が難しい範疇である。

MIT Technology Review に掲載されている記事
によると、120個のロボットを使った実験では、まず最初の30日間にTwitter社によってロボットであることを発見されてアカウントを停止されたのは僅か38個だけで、7割のロボットは発見されなかったという。この間、これらのロボットは延べ約5000人(その内の何人かは他のロボットかも知ないが)にフォローされ、2割以上のロボットは100人以上のフォロワーを得ることができた。Twitterの人間全ユーザーのうち46%しか、100人以上のフォロワーを持っていないことを考えると、素晴らしい結果である。また、Twitterにおける影響度を測るKloutという指数があるが、この研究者によるとロボットは有名な学者やソーシャルネット研究者並みのKloutを稼いだそうである。

これが意味していることは、企業側としては、Twitterロボットの悪用により、あたかもその企業の製品やサービスの人気があるかのようなニセの世論を作り上げることもできるが、同時に、競合企業のロボットにより戦略を誤らされる(例えば、競合にとって怖くない劣った製品やサービスの人気があるようなニセの世論を作られて、資源配分を誤るなど)ような可能性もある。Tweetのテキスト分析は、どこまで信用して良いのか分からないということだ。

ここまで人工知能が発達すると、140文字に拘る限り、効果的な対策は難しい。取り締まりを強化すると、本物の人間のアカウントを誤って停止してしまう確率が大きくなるからである。したがって、Twitterや他のSNSのテキスト分析に基づくビッグデータ活用には注意が必要となろう。

2014/06/18

論文査読システムの制度疲労

学会における論文査読システムは、
(1)査読者は、負担がやたら重い割りに恵まれず、
(1a)そのお陰で、編集者は査読をやってくれる人を捜すのが結構大変で、
(2)さらに採択(あるいは棄却)の判断まで時間が掛かり、
(3)さらに出版までに時間が掛かり、
ということで、「時代に合わなくなってきた」と言われて久しい。

かといって、全て事後査読にするとなると、
(1)玉石混淆の論文が溢れることになり、
(2)良い論文が埋もれて発見されない確率が増加し、
却って世の中のためにならない。

どうしたら良いか、皆で考え直す時期である。
どなたか、画期的な名案はありますか?

http://www.economist.com/news/science-and-technology/21604089-two-big-recent-scientific-results-are-looking-shakyand-it-open-peer-review

2013/12/20

経営情報学の国際化

先週末から、ICIS (International Conference on Information Systems, 経営情報学分野で世界で一番重要な国際会議)を含む一連の会議に出るために、ミラノに来ている。

ICIS や WISE (Workshop on Information Systems and Economics) のような国際会議でいつも感じるのだが、普段会わない海外と本国の韓国人同士や中国人同士が会議を機会に交流している場面は、日本人としては見ていて羨ましい。これは、そもそも
1.海外の大学で活躍している日本人が少ない
2.国際会議に参加する日本人が少ない
という決定的な条件から、今の処日本人には出来ないことである。

今回の ICIS でも、Ancillary Meeting として、JPAIS(AISの日本支部)とKrAIS(AISの韓国支部)の集会が、水曜日の午後に同じ建物の同じ階の真反対の場所で開催されたのだが、日本からは1ストリームで約20人参加、韓国からは4ストリームで約70人参加であった。勿論、日本の人口が韓国の2倍以上であることを考えると、少なくとも経営情報学においては、韓国の方が7~8倍国際化が進んでいるということができよう。

同時に、韓国や中国の若い研究者が溌剌としていて、非常に明るく見えるのは、若い研究者におとなしめの人が多い日本と大きな違いである。同じような儒教文化の社会だから、年功序列だけが理由ではないだろう。経済の勢いの差が原因だとしたら、1980年代の日本人研究者は溌剌としていなければならなかったのだが、あれほど溌剌としていただろうか。日本の国際化の現場では、いつも考えさせられることである。

2013/12/08

経営学は人びとを幸福にできるか?

本日の朝日新聞の書評欄に、宇沢弘文氏と『経済学は人びとを幸福にできるか』のことが紹介されていた。
  宇沢弘文 | 経済学は人びとを幸福にできるか

衝撃を受けた。

経済学について、こういう発想は初めて見た訳ではないが、何故か今日は、突然頭の中に「経営学は人びとを幸福にできるか?」という疑問が湧き、半日このことを考え続けた。戦略論は、マーケティングは、組織論は、人びとを幸福にできるか?

これは、一筋縄ではいかなさそうな挑戦だ。早速、「Philosophy of Management」と Google で引いてみると英国に同名の学術雑誌があることが分かったが、ウェブでこの雑誌の紹介を見てみると、ちょっと上掲課題とは異なるようだ。
       Philosophy of Management
また、よくあるような、功成り名を遂げた経営者による「経営哲学」とも違う。

私なりのアプロウチでは、先ずは「経営学にとって実現に貢献できるのは、どのような形の人びとの幸福か」を仮に定義してみて、「それぞれのディシプリン(領域、科目のこと)が、各々どのようにこの幸福に貢献しうるか、幸福をぶち壊すのか」を考察していく、ということだろうか。


たった今は3日後に迫った海外学会出張の準備で忙しいが、帰国後に時間をみて哲学者のTと議論してみよう。旅行中に、少しは考えを進められるかも知れないし。

2013/02/03

【書評】『ワーク・シフト』

Gratton, L. (2011), The Shift, Collins
池村千秋:訳(2012)『ワーク・シフト』プレジデント社


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もし、あなたの十代の子供達が「将来、ジャーナリストになりたい」「僕は、医者」と言ったら、親としてはどうアドバイスすべきだろうか?

これが、本書の元となったプロジェクトのきっかけだそうだ。著者は、英タイムズ紙の「世界のトップビジネス思想家15人」の一人に選ばれるなど、多くの賞を受けている、ロンドンビジネススクール教授(組織行動論)。企業・官庁スポンサーのコンソーシアムを組んで、2025年の仕事はどうなっているであろうか、と研究したまとめである。

まず、「技術」「グローバル化」「人口動態」「社会」「エネルギー・環境」の五分野にわたって、2025年の仕事のあり方に影響を与えると考えられる二十三のトレンド(たとえば、「都市化が進行する」「エネルギー価格が上昇する」など)が提示される。そして、 これらのトレンドを組み合わせることにより、2025年に世界のいろいろの場所にいるいろいろの職業の人々(例えば、ムンバイにいる脳脳外科医や、チッタゴンにいる米国人のソーシャルワーカーなど)について、  1990年頃の状況を振り返り、トレンドを現在から2025年に外挿して、彼らの仕事のやり方や生活の様子、何を考え、何が心配で、何が楽しみか、などの状況を一貫性のある絵として描いてみせる(多くの端布からパターンを生み出すパッチワークキルトに例えている)。これらの状況記述には、現在のトレンドがそのまま続いたときの悲観的なシナリオ5本と、現在のトレンドに対する積極的な介入に成功したときの楽観的シナリオ3本が用意され、最後に、筆者が有効と考える3つの対応法(「ジェネラリストから、連続スペシャリストへ」「孤独な競争から、協力して起こすイノベーションへ」「大量消費から、情熱を傾けられる経験へ」、筆者をこれらを「シフト」と呼ぶ)が説明される。

本書は読み物として刺激的にできているが、実は、環境について重要なトレンドを自分なりに加えたり、これに基づいて自分なりの悲観的なシナリオと楽観的なシナリオを作って、今何をすべきか考えるという、シナリオ計画法のワークブックとして使うときに、その真価を発揮する(著者もこれを奨めている)。ノウトを開いて、あなたとあなたにとって大切な人々の将来の仕事について、今後五年間に何をすべきか考えてみよう。

[本稿は、週間『ダイヤモンド』誌、2012年9月10日号、書林探索への投稿を基にしている]