2012/06/24

Connectivity and Crises 結合状態と危機

The article in the Economist discusses about financial contagions.  The most striking point is that in good times spillovers between countries don’t matter much—so markets can appear not to be related. But during a crisis, when volatility rises, pre-existing links between economies suddenly have huge effects, pointed out by Kristin Forbes and Roberto Rigobon, both of the Sloan School of Management at the Massachusetts Institute of Technology.  This finding complements well "Overconnected" by William Davidow, which claims that the over-connectedness of the complicated society and systems harbour seeds of big crises, such as the subprime crisis, Icelandic bubble and its burst, etc.  


I have just sent out a review of the book for "Diamond Weekly" (in Japanese) which is expected to appear in a fortnight.  What is curious is that a sentence, "This is what Perrow (one of the major organisation scholars, author of Normal Accidents) meant when he argued against building nuclear power plants", after another, "... we should avoid building systems that are inherently dangerous in the first place" (pp.201-202), is totally missing in its Japanese translation!  Although there has been censorship, both overt and covert, in Japan about the nuclear accident topics, has (self-)censorship arrived at this stage yet (Japanese translation was published on 19th April 2012)?



金融感染についての『エコノミスト』誌の記事。面白いのは、景気がよいときには国同士の感染は余りないのだが、危機に際してヴォラティリティが増加すると、もともとある国同士の関連が大きな効果を及ぼすことになるという点である。これは、ダヴィドウ著『つながりすぎた世界』による、複雑化した社会やシステムの過剰結合状態が大危機の種を醸成するという主張を、巧く補完している。


『週刊ダイヤモンド』誌のための同書(訳本)の書評を仕上げて送ったばかりであるが、多分2週間後位に掲載されるであろう。しかし、この訳書が興味深いのは、文中、「そもそも危険なシステムを作るべきでない」という処で「ペロウ(重要な組織学者の一人で『Normal Accidents』という良く引用される本の著者)が、原発建設に反対したのはこの意味からである」という一文が、さり気なくすっぽり落ちていることである。原発を巡る言論統制もしくは自己規制も、ついにここまできているのだろうか(訳本は、本年4月19日発行)?



2012/06/09

Digitisation and Productivity ディジタル化と生産性

According to the article, there seems a general correlation between the degree of digitisation and the productivity, but the digitisation by itself is not enough; it must be complemented by skilled workforce and appropriate management practices.  It is a pity that the article did not look into the organisational properties as E. Brynjolfsson of MIT and I do.

記事によると、一般的にディジタル化の程度の生産性には相関関係があるようだが、ディジタル化だけでは足りない。ITリテラシーを持った労働者や適切なマネジメントが補完せねばならないという。記事が、MITのBrynjolfssonや私のように組織特性を調べなかったのは残念である。

http://www.economist.com/node/21556221

2012/06/02

Are sample biases significantly affecting psychological experiments? 心理実験とサンプルバイアス

A large portion of disciplines, such as psychology and behavioural economics, depends on experiments utilising university/college students as subjects.  If the sample bias discussed in the article (WEIRD: Western, educated, industrialied, rich and democtatic) was significant indeed, perhaps the whole past works including e.g. those by a Nobel laureate Daniel Kahneman would need thorough review.

心理学や行動経済学等多くの学問分野は、大学生を使った実験に依存している。もし本記事が論じるようにサンプルが持つ WEIRD(西欧的、教育水準が高い、産業社会、豊か、民主的)というバイアスの影響だ重要だとしたら、ノーベル賞学者のカーネマンを始め、多くの業績を見直す必要が出てこよう。

http://www.economist.com/node/21555876

2012/04/16

Social Status and Health 社会的地位と健康

The studies at Whitehall in London had shown that the higher the mandarin's rank, the longer his life.  Now it has shown that (at least for female macaques) the working of genes differ dependent on one's social standing which affects her immune system, hence her health.  The hierarchical organisation seems bad for your health, unless you are at its top.

英国の官僚等における研究では、組織内の高位者ほど健康で長生きであることが分かっていたが、メスのマカクを使った実験により、グループ内の地位の高低により、免疫システムを司る遺伝子の働き(したがって、健康)が異なることが分かった。階層組織は、その頂点にいる人以外にとっては、健康に良くないらしい。

http://www.economist.com/node/21552539/print

2012/03/19

Future of the Press 新聞の将来

The Economist looks at the future of the press in the context of the on-line version.

『エコノミスト』のオンライン新聞と新聞の将来に関する記事。

What is missing here is the vulnerability of Japanese papers.  For example, it will probably be agreed that in the area of economic/business press, the Financial Times is far more important and influential globally than the Nikkei.  The global circulation of the former (including the digital edition), however, is only one fifth of the latter (predominantly in Japan).  Despite their bloated operation, the Japanese papers have little room for international expansion in the era of global on-line competitors.  Japanese are already over sold daily papers, and number of Japanese speakers globally is not growing.  Furthermore, in the past year, the main stream papers have lost confidence of the general public, as they have played to the government's tune in (not) reporting facts about the Fukushima accidents and aftermath.  If the New York Times and the Guardian are in difficulties, Japanese papers are in a catastrophy.

同記事に扱われていないのは、日本の新聞の状況である。例えば、国際的に見て、経済・ビジネス分野では、フィナンシャルタイムズの方が日経より遥かに重要で影響力があるということについては大方の同意を得られよう。ところが、前者の発行部数は(電子版を含めても)後者(殆ど国内で売られる)の5分の1にしか過ぎない。新聞がディジタル版では国際的に競争するようになっている時代にもかかわらず、日本の水ぶくれした新聞が国際進出出来る余地は限られている。国内では、(世界的比較から見ると)既に新聞の発行部数は多すぎるし、世界的に日本語を読む人口は増えそうもない。さらに、昨年の福島原発事故以来、主流新聞は政府寄りで事実を報道しないという実績で、信頼性を失っている。ニューヨークタイムズやガーディアンが困難に直面しているというのなら、日本の新聞は破局に面していると言えよう。


2011/12/07

【書評】Race against the Machine

Erik Bryjolfsson and Andrew McAfee (2011)
Digital Frontier Press

MITの E. Brynjolfsson 教授と A. McAfee 研究員による近著。

米国では、長期にわたり失業率が下がらず、家計収入の中央値が下がり続けている。リーマンショック以降は、企業収益や一人当たり GDP などは回復したにもかかわらず、この傾向が続いている。このことは、景気回復が雇用増大に結びつかず、さらに所得配分がいびつになりつつあることを示している。実際に、過去XX年間で見ると、一人当たり所得の中央値は下がり続けているものの、上位1%は、2002年以来の全米の富の増加分の65%を獲得し、1995年から2007年の間に上位0.01%の所得は3%から6%に上昇している。

雇用が回復しないことの原因について3つの理論があるとしている。1つめは、景気循環説で、大不況後の回復に時間が掛かっているだけで、何ら問題はないとする。2番目は、スタグネイション説で、鉄道・電気・内燃機関などに相当するような大規模な技術革新がなくなり、経済そのものの成長力がなくなってきたのが原因だとする。3番目は、雇用喪失説で、逆にITを中心とする技術革新の速度が速く、従来からの仕事が急速に機械に置き換えられている結果雇用そのものがなくなっているとする。著者等は、雇用喪失説の立場を採る。

ITの進歩により、従来コンピュータは苦手で人間の方が優位であるとされてきた領域で、人間の優位性が崩れつつある。例えば、グーグルは無人自動車を実際の道路で走らせたし、リアルタイムで英語・スペイン語・中国語間の翻訳をするシステムも実用化された。また、IBM開発のコンピュータは、チェスマスターのカスパロフを破っただけでなく、Jeopardy! という文脈まで理解せねばならない知識ゲームで人間のチャンピオンを破った。ムーアの法則に代表されるような、iTの指数的発展の結果、従来人間の領域とされた分野が次から次へとITに置き換えられつつある。筆者らは、企業業績が回復しても雇用が増えないのは、ITによる置き換えが進みつつあるからだと考える。また、ITの進歩に伴い、競争の勝者と敗者の差がよりはっきりするようになっている(economics of superstardom)と指摘する。人間は、このような進歩に対抗する(race against the machine)ことは不可能で、ITと一緒に競争する(race with the machine)べきだとする。

筆者らは、個人レベルの教育と同時に、ITの力を活用するために組織投資も必要だとするが、特に具体的な内容はない。巻末に、教育・起業・投資・制度 などについて、19項目の提言をしている。日本においても雇用が長期にわたって低迷し、企業業績は回復していても社会の閉塞感は晴れない状態が続いている。本書は ITを活用し、ITから利便性を得るための方策について考えるに際し、重要なきっかけを与えている。

今の処、電子書籍のみで、紙媒体は販売されていない。一昨日 ICIS (International Conference on Information Systems) 2011 で Brynjolfsson 教授に会ったときに聞いたところ、翻訳の話が進行中だという。

2011/11/10

『マネーボール』とマネジメント

日本では11日に公開される『マネーボール』(ベネット・ミラー監督、ブラッド・ピット主演)は、米国の球団、オウクランドアスレティックスとそのジェネラスマネジャー(GM)、Billy Beane の物語である。実写も交えた映画自体として面白く楽しむことができるが、マネジメントの点から学ぶこともある。

そもそも1990年代末のアスレティックスは、選手の給料総額が NYヤンキースの3分の1しかない貧乏球団だった。にもかかわらず、Beane がGMになって最初のシーズンの1998年には74勝だったが、99年には87勝、2000年と2001年にはそれぞれ91勝と102勝で、プレイオフに進んだ。映画の基となったMichael Lewis 著の『Moneyball』は、その後の2002年シーズン頃を舞台としている。2001年には、契約のルールにより給料が高額になった主力選手3名を放出せざるを得なくなり、2002年のシーズン前新人ドラフトがとても大切となった。勿論、貧乏球団が金持ち球団と同じ戦略を採ることは負けを保証することであり、Beane は、それまでのプロ野球界の常識を覆すデイタ重視の戦略で賭に出た。その結果、2002年には103勝を上げ、またプレイオフに進んだ。

(1)優秀な選手が抜けて出来た穴は、特定の点で優れているが他の領域では凡庸で世間の評価が高くない選手の組み合わせで埋め合わせることができる。

圧倒的な攻撃力を持ち、優秀な一塁手でもあった Jason Giambi が高額でヤンキースにドラフトされた後は、マイナーリーグでプレイしていた弟の Jeremy Giambi、36歳となって市場価値の落ちていた David Justice、怪我によって投球が出来なくなり捕手としての選手生命が終わってしまっていた Scott Hatteberg を安く雇った。この3人に共通する特徴は皆出塁率が高いことであったが、守備力には難点があった。そこで、Giambi と Justice は交代でレフトに充て、Hatteberg は訓練し直して投球の必要性が小さい一塁手とした。

つまり「人材がいない」と嘆く前に、業務にはどのような能力が必要なのか、緻密に分析して、キーとなる能力に注目してそれを持つ人を登用する。キーとなる能力以外の能力は劣っていても良いのであれば、代わりの人は容易に見つかる場合もある。あとは、それらの人々をどう組み合わせて活用するか、経営者の腕の見せ所である。

(2)試合に勝つための真の要因は、広く受け入れられている常識とは異なることも(しばしば)ある。

もし、勝つための真の要因が、常識の通りであったら、貧乏チームのアスレティックスに勝ち目はない。Bean は、イェイル大学で経済学を学んだ Peter Brand(原著では、ハーヴァード卒の Paul DePodesta。何故、映画では別人になっているのだろう?)の助けで、膨大なデイタの統計分析から、勝つために必要なのは、打率や盗塁率などではなく、出塁率と長打力であることを理解していた。試合中の攻撃では、振らないこと、投球数を多くさせること、出塁すること、チャンスがあれば長打を狙うこと、バントや盗塁禁止などの方針を徹底させた。また、新人が将来のメイジャープレイヤーになるための資質が、ストライクゾウンを操り、無闇に振らないで出塁を選ぶ能力であり、脚力や守備力は関係ないことも分析していた。したがって、新人ドラフトでは、出塁率では優れているが特に目立たず他球団が注目しないような大学選手(高校選手はデイタが少なすぎる)を好んで指名した。チーム運用効率化のポイントは、1出塁に必要な追加的コストを低下させることであった。

一般に弱者が強者と同じ戦い方をしては、勝ち目がない。弱者は、旧来の常識を捨て、市場や競争のダイナミックスをよく分析して、新しい戦い方を編み出さねばならない。その新しい戦い方が、強者には向かないようなものであれば、言うことはない。

(3)Billy Beane がアスレティックスで実行した戦略や考え方はずっと以前から知られていたものだが、彼以前にデイタに基づいた野球を実行した GM(または監督)はいなかった。

野球に関わる統計と勝因の分析は、Bill James に始まるとされ、多くの先駆者がいて、例えば打率は必ずしも勝ち数とは関係ないことも知られていた。アスレティックスが実際に勝利すると、プロ野球界には、悪口を言ったり腹を立てる人々も出てきた。米国で『Moneyball』がベストセラーになると、ビジネスだけでなく多様な分野の人々がアスレティックスの教訓を学ぼうとしたが、学ぼうとしなかったのはプロ野球界であった。

人間は保守的なものである。例え実証的な理論であっても、それまでの常識と異なると、なかなか採用することができない。デイタを見せられても、信じたくない人は信じない。人間は非合理な存在なのである。そのお陰で、実証に基づく経営(Evidence-based Management)は、業績を上げることができるのだ。

訳本は誤訳が目立つので、英語が苦でなければ、原書がお奨め。