米国の銀行規制当局(Federal Deposit Insurance Corporation)は、影響力の大きな銀行に対して、一定の条件を満たさなくなったときにどのように銀行を清算するのか、そのやり方を示すように求めている。
http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21647312-regulators-desire-make-banks-easy-kill-determining-how-they
つまり「組織の終わり方を自分で考えなさい」ということである。巨大銀行の場合には、これはシステミックリスクを避けるあるいは軽減する観点から重要なのであるが、その他の組織にとってみても、これは素晴らしいことではないかと思う。
特に日本の組織は、永遠に続くこと自体があたかも良いことであるかのごとくに思い込まされている節がある。Barnard を引用するまでもなく、そもそも組織とは目的があって作られるべきものであるので、その目的を達成したならば解散して、それまで使用していた資産やお金や人材などを他の目的のために解放ことするが、社会全体から見れば望ましい姿である。であるから、組織の目的は、それが達成されたのかどうかが明確にわかるような形に定義すべきであり、「世の中を良くする」というような、達成できたかどうか分からないようなぼんやりした定義はよろしくない。世の中には、ただ存在することだけが自己目的化して、社会的に積極的な意義を果たしていないと思われるゾンビ組織があまりにも多すぎる。目的を達成したらば、直ちに組織は解散または清算すべきである。たとえ同窓会のように継続して存続することが前提の組織であっても、例えば「会員の満足度」などを定量的に測定して、目的が十分に達成されていない時には、解散して出直すなり、役員を入れ換えるなりすべきであろう。
組織を作るときには、「何が達成されたならば解散するのか」、そして「その時にどのように清算するか」、サンセット条項のようなことを定款に含めることが望ましいといえよう。財団や社団の場合には、解散時の財産の処分の仕方を定款で定めるようになっているが、これでは「どういう時に解散するのか」は決められていない。 企業は、その目的を明確に定義し、目的達成時には解散するよう定款に定め、その時の清算法も規定しておくことが社会の効率化のためには望ましいと言えよう。
Ordinary organisational members, extraordinary organisational results! 普通の組織成員で、素晴らしい組織成果を!
2015/03/29
2015/03/27
アナリティックスと保険の将来
ビックデータとアナリティックスの普及により保険対象のリスクをより正確に見積もることができるようになると保険産業はどうなるであろうか?
そもそも保険とは、同じリスクカテゴリの人々をまとめて確率的に起こる事象に対して集団的に保証するシステムである。以前は、保険対象のリスク見積が難しかったので、どんぶりセグメントで十把一絡げにしてきたが、リスクを細かくセグメンテーションができるようになってみたら、実は大きいリスクを抱えた保険対象と小さいリスクしか持ってない保険対象が同じプールに入っていたことがわかったとする。小さいリスクの保険対象に、大きいリスクの保険対象と同じ保険料を支払うことは合理的ではないことは明らかである。そこで小さいリスクの保険対象を持っている人たちはそのセグメントだけで安い保険料率を決めたいと望むのは当然である。しかし、セグメントの細分化を可能とする情報に基づいて合理的に行動すると、社会全体としてはどのようなことが起きるだろうか?
疾病保険では、遺伝子などの情報により一人ひとりのリスクファクターが明らかになり、同じリスクのグループごとに異なった保険料率を適用することになろう。こうなると、小さいリスクの人たちのセグメントでは正常な保険が成立しうるが、大きいリスクをもつ人たちのセグメントでは保険料率が高くなりすぎて、保険に入らない(入れない)人も出てくるであろう。
自動車保険では、運転者の性格や事故の履歴、飲酒癖などは非常に重要なリスクファクターとなろう。
http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21646260-data-and-technology-are-starting-up-end-insurance-business-risk-and-reward
には、運転習慣(どの位急ブレイキを踏むか、など)を測定するデヴァイスをクルマに設置して、これに応じて保険料率を変動させる話が出てくる。
安全運転をする人のセグメントと危険な運転をする人のセグメントでは、当然、保険料率は異なってくるであろう。安全運転をする人のセグメントから中位のリスクの人のセグメントでは正常な保険が成立しうるが、大きな事故リスクを持ってる人のセグメントでは、おそらく保険料率が高くなりすぎて、保険は成立しなくなると思われる。つまり、このセグメントでは保険料率が高いので多くの人は保険に入らず、その結果非常に危険な人たちが任意保険なし(自賠責のみ)で車を運転し廻ることになる。こうなると、非常に危険な運転をする人のセグメントについては法律で運転を禁止するか、普通の人々は災害保険に入るしか手の打ちようがなくなるかもしれない。
生命保険については、健康に関する遺伝情報とそれからその人の危険な行動するかどうかの情報からリスクファクターを割り出すことになる。この場合も、リスクファクターが小さいセグメントでは正常の保険が成り立つが、リスクの大きい人々のセグメントでは保険は成り立たなくなる。
いずれの場合においても、リスクの見積もりが正確で細くなるにつれ、そもそもの保険の概念が変わらざるを得ない。従来からの、ドンブリセグメントによる保険は成り立たなくなるであろう。米国のオバマケアでも議論されたが、リスクファクターの大きい人に高い保険料を適用できない保険会社が、リスクによるセグメントごとに細かく保険料を設定できる保険会社に対する競争に負けるのは必定である。しかし、リスクプロファイルの大きな人を保険から排除するとなると倫理的な問題もある。リスクファクターの大きな保険対象は政府が担うしかなくなるかもしれない。
現在私も、将来の明確な見通しを持っているわけではないが、保険産業は大きな構造変革に見舞われることはまず間違いなかろう。情報技術を活用した革新的な解決法をもたらす企業には大きなチャンスが期待できる。ワクワクする時代である。
そもそも保険とは、同じリスクカテゴリの人々をまとめて確率的に起こる事象に対して集団的に保証するシステムである。以前は、保険対象のリスク見積が難しかったので、どんぶりセグメントで十把一絡げにしてきたが、リスクを細かくセグメンテーションができるようになってみたら、実は大きいリスクを抱えた保険対象と小さいリスクしか持ってない保険対象が同じプールに入っていたことがわかったとする。小さいリスクの保険対象に、大きいリスクの保険対象と同じ保険料を支払うことは合理的ではないことは明らかである。そこで小さいリスクの保険対象を持っている人たちはそのセグメントだけで安い保険料率を決めたいと望むのは当然である。しかし、セグメントの細分化を可能とする情報に基づいて合理的に行動すると、社会全体としてはどのようなことが起きるだろうか?
疾病保険では、遺伝子などの情報により一人ひとりのリスクファクターが明らかになり、同じリスクのグループごとに異なった保険料率を適用することになろう。こうなると、小さいリスクの人たちのセグメントでは正常な保険が成立しうるが、大きいリスクをもつ人たちのセグメントでは保険料率が高くなりすぎて、保険に入らない(入れない)人も出てくるであろう。
自動車保険では、運転者の性格や事故の履歴、飲酒癖などは非常に重要なリスクファクターとなろう。
http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21646260-data-and-technology-are-starting-up-end-insurance-business-risk-and-reward
には、運転習慣(どの位急ブレイキを踏むか、など)を測定するデヴァイスをクルマに設置して、これに応じて保険料率を変動させる話が出てくる。
安全運転をする人のセグメントと危険な運転をする人のセグメントでは、当然、保険料率は異なってくるであろう。安全運転をする人のセグメントから中位のリスクの人のセグメントでは正常な保険が成立しうるが、大きな事故リスクを持ってる人のセグメントでは、おそらく保険料率が高くなりすぎて、保険は成立しなくなると思われる。つまり、このセグメントでは保険料率が高いので多くの人は保険に入らず、その結果非常に危険な人たちが任意保険なし(自賠責のみ)で車を運転し廻ることになる。こうなると、非常に危険な運転をする人のセグメントについては法律で運転を禁止するか、普通の人々は災害保険に入るしか手の打ちようがなくなるかもしれない。
生命保険については、健康に関する遺伝情報とそれからその人の危険な行動するかどうかの情報からリスクファクターを割り出すことになる。この場合も、リスクファクターが小さいセグメントでは正常の保険が成り立つが、リスクの大きい人々のセグメントでは保険は成り立たなくなる。
いずれの場合においても、リスクの見積もりが正確で細くなるにつれ、そもそもの保険の概念が変わらざるを得ない。従来からの、ドンブリセグメントによる保険は成り立たなくなるであろう。米国のオバマケアでも議論されたが、リスクファクターの大きい人に高い保険料を適用できない保険会社が、リスクによるセグメントごとに細かく保険料を設定できる保険会社に対する競争に負けるのは必定である。しかし、リスクプロファイルの大きな人を保険から排除するとなると倫理的な問題もある。リスクファクターの大きな保険対象は政府が担うしかなくなるかもしれない。
現在私も、将来の明確な見通しを持っているわけではないが、保険産業は大きな構造変革に見舞われることはまず間違いなかろう。情報技術を活用した革新的な解決法をもたらす企業には大きなチャンスが期待できる。ワクワクする時代である。
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