2015/04/05

規模と複雑性の罠

巨大なグロウバル銀行の収益性が低下して、悲惨な状態になっているという(The Economist、2015年3月7日号)。経営の複雑性、地元銀行からの競争圧力、規制強化の3つの原因が挙げられている。

第1の原因は、複雑性であるが、巨大で複雑な組織というものはそのマネジメントにとてもコスト(経営者のアテンションと時間とエネルギー)が掛かるのである。企業などでは余り議論されていないようだが、しばしば、この複雑性に帰因する問題は人智の限界を超えることになりかねず、巨大化による規模の経済を打ち消してしまう。

ソニーの不振の原因の1つもここにあると考えられる。家電と半導体とデヴァイスとエンターテインメントとネットワークと金融を同じ屋根の下に入れるのは、スーパーマンのような経営者をしてもとても困難であろう。古くは経営学者の Penrose も、マネジメントの複雑さが企業成長の制約になることを指摘している。

逆にアップルの好調の原因の1つは、同社の製品ラインおよび事業領域が極めて限られていることにあると考えられる(しかし、今後もこの優位性が維持されるかどうかは、経営者次第。既に、遠くに暗雲が見える)。マーケティングコンサルタントの Reis もフォウカスの重要性を繰り返し指摘しているし、筆者の提唱する組織IQにおいても「組織フォウカス」は5つの原則の内の1つとなっている。

製品ラインや事業分野がフォウカスされていることにより、意思決定の複雑さが減少され、意思決定に関わる情報処理の負荷が小さくなることの利益は計り知れない。企業の多角化や国際化において必ずしも陽表的に評価・議論されていない側面であり、注意が肝要である。

組織マネジメントにおいては(も?)、シンプルイズベストである。