
ヴァンクーヴァーで日本のメダルが多かった(十分だった)かどうかが、議論され始めている。
成績の議論は、他国との比較になるのだが、どの国とどう比較するかが問題となる。冬季オリンピックはこの比較が難しい。当然ながら、雪や氷が多い北国でかつ豊かな国(たとえば、ノルウェーなど)が有利となるが、この要因をどう計量的に反映させるかが難しい。
夏のオリンピックについては、地理的な優位性が余り効かなくなるので、もう少し話が単純となる。国の人口によるメダル数の評価は既にされている(例えば、http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3984.html )が、目立った傾向は出ていないようである。これは、昔の素朴なオリンピックであれば、確かに人口が多い方がその分だけ優秀な選手が多くなる確率が大きく有利であったろうが、現代のオリンピックはトレーニングなどにお金が掛かるために、人口だけでは説明できないということであろう。むしろ、経済力(GDP)で評価する方が、現実に合っていると考えられる。
評価対象としては、まず、開催国は常に有利であるので除外する。GDPの比較的大きな先進国としての G7(米国、日本、ドイツ、フランス、英国、イタリア、カナダ)が比較の候補と考えられるが、ロシアや中国は社会体制が異なることから除外するのが適当であろう。その他、韓国が比較的日本と似ていると考えられるので、評価対象に加える。
水平軸に GDP、縦軸に獲得メダル数のグラフを書くと、当然ながら、右上図のように右上がりとなるのだが、下の表はその説明力を数字的に見たものである。
この結果によると、アテネ大会と北京大会における G7および韓国のメダル獲得数の差は、その殆どがその国の GDP の大きさによって説明される。また、日本の国力に応じたメダル獲得数は、金メダルが概ね15~17個、メダル総数で45~50個というところが妥当な数字である。日本と同じように、実績が理論値より低い国はカナダである。
報道によると、「鳩山首相は、冬季五輪でメダル5個を獲得した日本選手団を評価。そのうえで「国として強化策を考えたい」と語った。」と伝えられている。強化対策の目標は上のような数字に置いて、選手団にはもう少し頑張って貰わねばならないであろう。
